バイクのブレーキが効かない!ブレーキ故障の原因と対処方法

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バイクを安全に運転するうえで何よりも大切なのがブレーキです。走行している最中にブレーキが効かなくなってしまうと、大事故につながる恐れもあります。そんなブレーキ故障に万が一直面しても対応できるよう、事前にブレーキ故障の知識を備えておくことはとても大切なことです。
この記事では、ブレーキ故障の原因と対処方法について解説していきます。

よくある故障原因その1「ブレーキシューやブレーキパッドの摩耗」

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バイクのブレーキにはドラム式とディスク式の2種類があります。ドラム式はタイヤと一緒に回る筒状のドラムに、ブレーキシューという部品を内側から押しつけることでブレーキをかける方式です。

一方ディスク式は、タイヤと一緒に回るディスクローターをブレーキパッドと呼ばれる部品で挟んでタイヤの回転を止めます。

構造上の違いはありますが、どちらの方式もブレーキシューやブレーキパッドで、回転するタイヤに圧力をかけてバイクを停止させます。速いスピードで回転しているタイヤを摩擦の力で止めているため、ブレーキをかけるほどブレーキシューやブレーキパッドが摩耗してしまうのは仕方がないことです。

ドラム式のブレーキシューが摩耗してしまうと、ブレーキパッドからドラムまでの距離が遠くなってしまい、ブレーキレバーの遊びが増えてしまいます。そうなると、ブレーキレバーを強く握りこまないとブレーキが効かない状態になってしまいます。

さらに摩耗が進むと、ドラムの回転を止められるほどの摩擦力を発揮できなくなり、ブレーキが効かなくなる恐れもあるのです。

ディスク式の場合も、ブレーキパッドが摩耗することによって十分な摩擦力が得られなくなり、ブレーキの効きが悪くなります。

ブレーキパッドが摩耗しているにもかかわらずバイクを使用し続けると、本来ディスクローターには触れないはずのベースプレートが触れてしまい、ディスクローターを傷つける可能性もあります。
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ブレーキパッドが摩耗しているにもかかわらずバイクを使用し続けると、本来ディスクローターには触れないはずのベースプレートが触れてしまい、ディスクローターを傷つける可能性もあります。

そうなってしまうと、ブレーキパッドの交換だけでなくディスクローターの修理までしなければいけません。

これらの部品が摩耗している場合は、新しいものに交換することで症状を改善することができます。

よくある故障原因その2「ブレーキフルードの劣化」

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ブレーキフルードとはブレーキオイルとも呼ばれ、ディスク式のブレーキに用いられる液体のことです。ディスク式ブレーキは、ブレーキフルードを介してブレーキレバーを握った力をブレーキキャリパーへと伝えています。

そのため、ブレーキフルードが汚れていたり劣化していたりすると、ブレーキレバーを握った力がブレーキキャリパーへと伝わりづらくなってしまうのです。

ブレーキフルードはオイルなので、どれだけしっかり密封されていても長期間使用し続けると酸化してきてしまいます。オイルは酸化すると水分を含むようになります。

また、ブレーキフルード自体が湿気などの水分を吸収しやすい成分からできているため、長期間使用していなくても水分を含むことがあります。

ブレーキフルードに水分が混じることで起こるのが、ペーパーロック現象というものです。ブレーキフルード内の水分が多くなると、沸点が低くなり沸騰しやすくなります。沸騰するとブレーキ配管内に気泡ができてしまい、いくらブレーキレバーを握っても気泡が潰れるだけで、ブレーキキャリパーへと力が伝わらなくなってしまうのです。

そうなると当然いくらブレーキレバーを握っても、ブレーキが効かないという状態になってしまいます。これがペーパーロック現象です。

ブレーキフルードは新品の状態ならば薄い黄色をしています。しかし酸化して劣化すると、次第に茶色へと変化していきます。ブレーキフルードが茶色くなったら、速やかに交換するように心がけましょう。

よくある故障原因その3「ブレーキ部品の固着」

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ブレーキ部品の固着は、しばらく乗っていなかったバイクに起こりがちの不具合です。ドラム式とディスク式では固着の原因が異なるので、それぞれ見ていきましょう。

ドラム式のブレーキは、ブレーキレバーを握ったりブレーキペダルを踏んだりすると、ブレーキワイヤーが引っ張られ、それにつながったカムシャフトが動くことでブレーキシューが開くような構造になっています。

そのため、ブレーキペダル、ブレーキワイヤー、カムシャフトの3点のいずれかが固着していると、ブレーキ操作しても力が伝わらなくなってしまうのです。

ブレーキペダルの軸部分やカムシャフトはグリス切れや汚れ、錆などが原因で固着してしまいます。汚れや錆などをきれいに取り除いてグリスを補充すれば、固着を解消することが可能です。
ブレーキワイヤーは円滑に動くためにオイルが用いられています。

そのため、油切れを起こすと当然動きが悪くなってしまいます。また、ブレーキワイヤーのアウター内に雨水が入ることも多く、そのせいで錆びついてスムーズに動かなくなることもあります。ブレーキワイヤーの内部はどうなっているか見ることはできません。

そのため、油切れで動きが悪いのか、錆て動かないのか判断するのは難しいです。油切れならば注油するだけで固着は解消しますが、錆て劣化している可能性もあるので、できればブレーキワイヤー自体を交換するようにしましょう。

ディスク式では、ブレーキパッドを押さえつけるためのピストンがあり、そのピストンはブレーキフルードの油圧で動いています。

ピストンにはピストンシールというゴム製のリングが巻かれており、このピストンシールがブレーキフルードの漏れを防いだり、ブレーキレバーを放した際にピストンを戻したりしています。このピストンシールがディスク式ブレーキの固着を招いてしまうのです。


長期間使用されていなかったり、雨ざらしの中放置されていたりすると、ピストンシールが劣化してしまいます。ピストンシールが劣化すると、ブレーキフルードが漏れ出てブレーキが効かなくなったり、ピストンを戻す力がなくなってブレーキが戻らなくなったりしてしまいます。

このような症状が出た場合は、ピストンシールを新品と交換することで改善することが可能です。

安全確保が第一!ブレーキ故障の対処方法

バイクに乗る際は、ブレーキがしっかり効くかどうか事前にチェックしておくことが大切です。少しでも違和感があったら無理に走行せず、故障の原因を突き止めるようにしましょう。「リザーブタンクを開けてブレーキフルードの状態をチェック」「ブレーキパッドが摩耗していないか確認」などをすることで、故障の原因を突き止めることができます。

簡単に取り外しができる部品の交換や、掃除・注油などで症状が改善する場合は、自力で修理するのもよいでしょう。しかし、ブレーキは事故や命にかかわる部分なので、自力での修理に少しでも不安がある場合は、プロの修理屋に依頼した方が安心です。

また、走行の最中にブレーキへの異変を感じたら、ブレーキが完全に効かなくなる前に停車して、安全を確保するようにしましょう。無理に走行を続けると、思わぬ事故を引き起こす可能性もあります。

「ゴミが挟まってブレーキが効かなくなっていた」程度の不具合ならばゴミを取り除くだけで解決できますが、その他の場合だとなかなか応急処置をするのは難しいです。そのような場合は効いているブレーキだけを使って走行するようなことはせずに、レッカーなどを利用するようにしましょう。

日頃のメンテナンスでブレーキの異変を察知しよう

ブレーキの故障は、劣化や摩耗が原因であることが多いです。そのため、日頃からメンテナンスをこまめに行っていれば、大きな故障になる前にブレーキの異変に気づくことができます。

また、走行中にブレーキの異変を感じたら落ち着いて安全な場所に停車し、レッカーを呼ぶなどしましょう。

大切な愛車と自分の身を守るためにも、ブレーキ故障の原因を知って、正しい対処方法を取れるように備えておくことが大切です。