工具を選ぶ際の注意!

商品紹介
※実験の結果は、被験工具のある一部分の性能を切り取ったものであることをご了承ください。【再掲】

息子よ…ヘルメットと工具はいいものを選ぶのじゃ…ゴフッ

私がバイクに乗り始めた20数年前、一番身近な先輩ライダーである父親は、私にこんなアドバイスをくれました。
※父はまだ健在です



なけなしのお小遣いをはたいて、当時のAraiヘルメットの中堅モデル「ラパイドV ホワイトMサイズ」を電車に乗って買いに行ったのはいい思い出です。

そして工具。
小学生高学年のころから自分の乗る自転車の整備、カスタムを趣味にしていた私は、比較的早い段階で工具に触れていました。

思えば当時使っていた工具は、自動車の車載工具だったり、ホームセンターの安工具だったり、いろいろゴチャマゼで使ってましたね。

そして高校生になったある日、アルバイトで溜めた資金を懐に、大型ホームセンターにてKTCブランドのソケット類、ラチェットハンドル、メガネレンチなどを一気買いし、一流工具道のスタートラインに立ちました。



…数年後、現在の職業につき、お決まりの工具沼にドップリ。

「一生使うハンドツールはSnap-onだろ」

「はさみ物はKnipexが最高!」

「ドライバーと六角レンチはスイスのPBが至高!」
などとうんちくを語り出す始末…


父の教えを忠実に守る私なので、工具はかなり早い段階でいいものを使ってたんですよね。


ホントにダメな工具なんてあるのかしら?
当店で売ってるような工具と、100円均一ショップで売ってる工具に違いはあるのかしら?

という疑問を解決すべく、ある実験をしてみました。

ドナーの準備

※ここからの実験の結果は、被験工具のある一部分の性能を切り取ったものであることをご了承ください。

入手のしやすさと比較のしやすさから、今回のドナーはヘキサゴンレンチにしました。
いわゆる「六角レンチ」ですね。

家具を買えばおまけについてくるし、おそらくこの工具を見たことない方はいないでしょう。



今回は、100円均一ショップの六角レンチを二種類、見た目は100均工具とほぼ同じ「エーモン」はRIGブランド、普及価格と高いデザインで人気の「SIGNET」、六角レンチの最高峰、スイスメイドの「PB」の5種類を比較してみます。
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すべて「6mm」のL字型を使用します

実験方法

実験方法は簡単
万力に六角レンチを固定し、M8×20のソケットボルトにナットを固定し、ナット部分を任意の締め付けトルクに設定したトルクレンチで締めていき、ボルトの六角穴、もしくは工具が破損するまで締め付けトルクを10Nmずつ上げていきます。


条件を同じにするため、バイスから飛び出す部分は10mmに統一しました。
また、工具を変更する度にボルト類は新品に交換しております。
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バイスから飛び出す部分は10mm
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工具が破損するまで締め付けトルクを10nmずつ上げていきます
ちなみに二輪車に使用されているM8ボルトの規定締め付けトルクはだいたい25nm(ニュートンメーター)前後。
こちらの数値をスタートの基準値といたします。

テスト1:100均工具その1

工具本体になにも刻印はありません。
ただ、みるからに安っぽい作りです。

固定した六角レンチにボルトをはめてみると、ガタが大きいように思います。

まずは規定値の25Nm
トルクレンチの「カチッ」という音とともにテスト終了。なんの問題もありません。

そして30Nm
こちらも問題ありません。

40Nm
なんとか規定値まで締め付けることはできましたが、工具にボルトがカジってしまいました。
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工具、ボルトともに破損が近い状況です。
50Nm
トルクをかけていくと「ニュルッ」という手応えとともにボルトの穴がナメました。
確認してみると、六角レンチの先端は真ん丸に変形、ボルトの方は比較的軽症ですが、変形しております。
レンチ自体も大きくねじれています。
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六角レンチの先端は真ん丸に変形、ボルトの方は比較的軽症ですが、変形しております。
レンチ自体も大きくねじれています。

テスト2:100均工具その2

工具本体に「Cr-Mo」の刻印…
クロームモリブデン製なの…?

25Nm
問題なし

30Nm
問題なし

40Nm
カジリ発生

50Nm
ボルト側が破損
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先ほどのテスト1で使用した工具に比べればぜんぜんマシですが、こちらも六角レンチの角が丸くなってしまっています。
この状態で、次回使用する際に同じトルクがかけられるとは思えません。
よって、50Nmでボルト、工具ともに使用不可というテスト結果といたします。

テスト3:「エーモン」の六角レンチ

当店在庫分より、セット価格が一番安く、見た目は100均工具と同じ「エーモン」の六角レンチのテスト開始

こちらは本体に「Cr-V」の刻印あり
工具には一番ポピュラーなクロームバナジウム鋼を使っています。

25Nm
問題なし

30Nm
問題なし

40Nm
カジリ発生

50Nm
カジリ甚大

60Nm
ボルト穴破損。工具側も多少の傷は入ってますがメクレは無く、まだ使えそうです。
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ボルト穴破損。工具側も多少の傷は入ってますがメクレは無く、まだ使えそうです。

ここまでの経過

テスト後の六角レンチを3本並べるとこんな感じです。

テスト後の六角レンチを3本並べるとこんな感じです。

(上からエーモン、100均2、100均1)
比べて見ると、工具の損傷の差がおわかりでしょう。

テスト4:「SIGNET」の六角レンチ

そしてSIGNETをテストします。

25Nm
問題なし

30Nm
問題なし

40Nm
問題なし

50Nm
カジリ発生

その後、締め付けトルクを10Nmずつ上げて実験を続けると、80Nmをテスト中にボルト側が破損してテスト終了。
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工具側はまるで無傷です

テスト5:「PB」の六角レンチ

そして最後は当店在庫ラインナップの中でも一番高額のPBをテスト。

ちなみにこちらのPB6mm六角レンチは1本で¥1617!!

先ほどのSIGNETが1.5mmから10mmまでの10本セットで当店販売価格¥1680ですから、その価格差は10倍近いものがあります。


25Nm
問題なし

30Nm
問題なし

40Nm
問題なし

50Nm
問題なし

60Nm
カジリ発生

その後、締め付けトルクを10nmずつ上げて実験を続けると、SIGNETと全く同じ80nmでボルト側が破損。
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このあたりの数値がボルトの限界値なのでしょう。
こちらも工具側はまるで無傷です。
ちなみにM8のボルトに80Nmのトルクって有り得ない数値ですからね。
ちょっと調べてみると、CBR1000RRのフロントアクスル部や、CB400SFのフロントスプロケット固定ナットの締め付けトルクが80Nmです。
いかに無理な力でテストしたかがおわかりかと思います。

工具テストの総括

今回のテストの結果「100円均一ショップで売っている六角レンチと、当店で販売している工具メーカーの六角レンチには明らかな強度の違いがある!」という結果がわかりました。

ただ、疑問点。
L字型に曲げた形状の8~9センチ程度の六角レンチで、M8のボルトを25Nmで締め付けられるか?
25Nmで締まっているM8のボルトを緩められるか?
というと、恐らく不可能だと思います。
*メガネレンチをひっかけたり、パイプで延長したりして長さを稼ぐのは問題外…ケガするのでやめましょう…)

たしかに当店のメカニックはよっぽどクリアランスが稼げないところにしかL型の六角レンチは使わないですからね…
ほとんどの箇所をTハンドルに付けたソケットタイプを使用している場合が多いようです。


最終的に自分の中では「当店で販売している工具は、強度的には問題無いが、二輪の整備には向かないものもある」という結論に落ち着きました。

これは今後の工具ラインナップも見直す必要があるかもしれません…

これから工具を揃えようという若人達よ!
ぜひ工具はちょっと無理してでもイイモノを揃えましょう。
当店にラインナップしている工具だと、SIGNETあたりは価格と性能が高い次元でバランスしていると思います。
(ワタシのスタート地点のKTCだと、初めての工具にしてはちょっと高価ですかね…)
ご相談いただければ、ご予算に合わせた組み合わせをご提案いたします!!

長文+地味な写真にお付き合いいただいてありがとうございました。