「モーター」ショーじゃない「モビリティ」ショー!

バイクで遊ぶ
~ジャパン・モビリティ・ショーは10/28一般公開開始!
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毎年10月といえば、オートバイ界のニューモデル発表ラッシュの時期。EICMAやインターモトをはじめとした海外のモーターショーや、2年に一度は日本でも「東京モーターショー」が行なわれてきました。
その「東京モーターショー」が2023年から大きく変わりました。名称は「ジャパン・モビリティ・ショー」。従来のような、ニューモデル公開を中心としたモーターショーから、モビリティ、つまり近未来の乗り物社会への提案を見せるショーへと様変わりしたのです。
これ「いつもの」モーターショーだと思って現地に行く人はびっくりするでしょうね。ニューモデルでワクワクするというより、近い未来の交通社会をイメージさせるショーになっていました。
※開催期間は2023年10月28日(土)~11月5日(日)です

筆者は東駐車場のゲートから東展示棟へ入場したんですが、東展示棟「7/8」ホールに入ってすぐにあらわれたのがモータースポーツエリアとキャンピングカーエリア。モータースポーツエリアには、まずMotoGPマシン・ヤマハYZR-M1とホンダRC213Vのお出迎えです。
けれど、ここで「ん?」 いつもなら大々的に正面にいるはずのMotoGPマシンが入り口から遠く、正面にはオフロード&トライアルマシンが目立っています。
しかも、トライアルマシンはヤマハTY-E2.2、つまり電動トライアルマシン。隣にあるのは、ホンダのモトクロッサーであるCRエレクトリックPRO、これも電動です。
――おぉ、こんな時代が身近になってきたんだなぁ、と歩を進めると、奥には世界耐久マシンやスーパーバイク車両も。ひと時代前だったら、このMotoGPマシンやスーパーバイクが前面に立って、お客さんをお迎えしていたんですけどね。
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モータースポーツブースに展示されていたレーシングマシン達。MotoGPマシンや世界耐久&スーパーバイクに混じって、電動トライアルや電動モトクロッサーも出展されています
展示棟を移動し、東展示棟「4/5/6」ホールへ。入り口をはいると、すぐにカワサキブースです。
こちらには本邦初公開となるNinja7 HybridとNinja e-1が展示発表されていました。
この2モデル、ガソリンエンジンから一歩先へ進んだモデルとして開発されたもので、Ninja 7 Hybridは451ccのエンジンとモーター+大容量バッテリーを組み合わせたパワーユニットを持つ、世界初の新世代スポーツ。エンジン+モーターの「フルパワー」、モーターとエンジンの部分併用がある「エコハイブリッド」、モーターのみの低速&近距離用「EV」モードを選択できるとのことです。
Ninja e-1はモーター+リチウムバッテリーのEVモデル。フルパワーの「e-boost」、取り回し時に使う「ウォークモード」など、電動モデルならではの走りが楽しめるスポーツバイク。リチウムバッテリーは家庭用コンセントからの充電が可能で、1充電あたり約72kmの走行が可能ということです。
さらにカワサキブースには、これも世界初公開ニューモデル、メグロS1/W230も展示されていました。
この2モデルは基本コンポーネントを同一としていて、新設計の空冷SOHC230ccエンジンを搭載。エストレヤが生産終了となって以来の、250ccクラスのストリートバイクですね。まだ詳細は明らかになっていませんが、国内市販は確実。2024年の春ごろには全貌がわかるかもしれませんね。
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左は世界初のストロングハイブリッドバイク、Ninja 7 Hybrid。右はNinja e-1。まさか生誕40年を迎える「Ninja」も電動に自らの車名が使われるとは思わなかったでしょうねぇ
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メグロSG250から100年! W230と兄弟車のメグロS1
カワサキブースを過ぎると、ホンダのスペースです。ブース入り口にはホンダ×建設重機のコマツが共同開発している、と発表されたことがあるマイクロショベルカー。オペレーターシート下にはホンダモバイルパワーパックが2連装されていて、これがエンジン車でないことをアピールしています。
さらに、その隣にはヤマト運輸のマーク入りのN-VANがありましたが、これも後部座席下にモバイルパワーパックを4連装。これは、23年6-8月に実証実験も行なわれていて、もう宅急便も電動の時代が始まっているんですね。
この奥には、SC eコンセプトなる電動スクーターが展示され、その横にホンダがこの先の電動ライフの核としてアピールしたい「ガチャコ」スタンドがありました。「ガチャコ」いま知っていないとヤバいですよ。
ガチャコは電動バイク用バッテリーの共用システムのことで、ホンダ/ヤマハ/スズキ/カワサキとENEOSホールディングスが共同で設立した会社であり、サービスです。つまり、電動バイク用のバッテリーを国内4社で共通化して、ガチャコのバッテリースタンドをあちこちに設置しよう、という提言です。
自分ちから電動バイクやスクーターで出かけます→バッテリーが切れます→ガチャコのスタンドでバッテリーを交換→また走り出す、というのがガチャコ構想。理想でいえば、スクーターだけじゃなくて、クルマも自転車もバスもトラックもみんなガチャコにすれば、まずは電動車の充電の手間や航続距離問題が解決しますからね。出川哲郎さんのTV番組「充電させてもらえませんか」が成立しなくなっちゃいますね(笑)。
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左上がガチャコのバッテリースタンド。すでに都内や大阪に設置されていますね。右が電動スクーターで、左下がヤマト運輸と共同で開発したガチャコで動くN-VAN、右はガチャコで動くKOMATSUのマイクロショベル
とはいえ、ホンダ隣のヤマハブースには、ショー直前に正式公開されたXSR900GPを見つけました! 国内モデルであるXSR900をベースに、往年のグランプリマシンをオマージュしたスタイリングを与えられたニューモデルで、ネーミングも何とXSR900GP! 横にはイメージの元となったYZR500も置かれていましたね。白×蛍光オレンジ×黄色ゼッケンベースは、まさにエディ・ローソン時代の最強グランプリ500ccマシン、YZR500を思わせてくれました。このXSR900GP、まずヨーロッパで発売し、24年夏以降に日本発売予定なんだそうです。
ヤマハはこのほかにも電動モデル、水素エンジン搭載車を展示していましたが、ステージ上にはモトロイドやELOVE、さらにYZF-R3を展示。これは、前回のモーターショーでもモトロイドが話題になったように、AMSAS=二輪車安定化システム、つまり「転ばないバイク」像を提示していました。
近未来のモビリティって、電動や脱炭素だけじゃない、バイクに特化した近未来像があるはずだ、というヤマハのアピールですね。
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ニューモデル関連では一番人気になるでしょう! もう話題沸騰のXSR900GP! 隣にYZR500置くとはにくい!
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写真は電動ミニバイクと水素仕様のスクーター キャンプ用品積んでるな、と思ったら水素ボンベでした
さらに進むとスズキブースです。ホンダと同じく、バイクだけじゃなくクルマのメーカーでもあるので、ブースが広い! 入口すぐに、お客さんが利用できるハヤブサの「背景つき撮影台」が用意され、その横にGSX-8Sと、発表されたてのVストローム800が展示されています。このあたりは、通常のモーターショーっぽいですね。
ステージ上にはなつかしのチョイノリと電動アシストサイクルが。と思ったら、これ「eチョイノリ」と、フォールディング(=折り畳み)自転車に見えるけど、原付な「e-PO」(=イーポ、と読みます)。e-POは、折り畳み電動モペッド扱いで、フル電動/電動アシスト/ペダル走行する自転車の3ウェイビークル。パナソニックとの共同開発で出来たモデルで、ミラーもウィンカーもテールランプも装着されていました。
さらにハヤブサのちょうど逆サイドには、水素エンジンのバーグマン(これは400ベース)と、バーグマンストリート125EXの電動モデルを展示。バーグマンの水素エンジン車と言えば、スズキがいち早く北九州市で実証実験を行なっていたモデルですね。
さらに、初登場の125EXベースのバーグマンこそ、上に書いた「ガチャコ」を使用した電動スクーターで、いよいよガチャコも広がりを見せ始めましたね。
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左がガチャコを使用する電動バーグマン 右はステージ上展示だったeチョイノリとe-poです マジ自転車かと思ったらウィンカーつきでした!
ひととおり会場を回って気づいたのは、ホンダブースに展示されているバイクが……ほとんどないんです。ハンターカブもDAXも、GB350もCBR1000RR-Rもない。そうです、これがモーターショーとモビリティショーの違いなのです。
国内4メーカーの他にも、そこかしこに電動スクーター関連の出展が多かった、ジャパン・モビリティ・ショー。いつもの「2年に一度のニューモデルのお祭り」のつもりで出かけると肩透かしをもらうモビリティ・ショーですが、いま自動車とバイクの交通社会が直面している「未来」を感じるうえでは、すごくいい機会なんじゃないかと思ったショーでした。
「電動バイクなんてまだまだ先の話だよ」なんて言ってられない時代がやってきたということですね!